明日、11月15日金曜日の金曜ロードショーにて、ディズニーアニメーション映画「アナと雪の女王」が放送されます。

なんといっても松たか子さんが歌い上げる主題歌の評価、アイドル路線のイメージが強かった神田沙也加さんが声優・ミュージカル歌手としての実力を示した出世作とも言えるでしょう。

やはりというべきか、今回の地上波放送では残念ながら「オラフ」の声が変更されていますね…

アナと雪の女王がなぜ大成功したのか

さて、アナ雪が興業収入の数字としても大成功をおさめたのは周知の事実なわけですが、その背景について、ディズニー好きの視点から改めて語りたいと思います。

公開してから大ヒットを記録するまで、様々な視点から解説されていましたが、それらの解説について筆者が一番感じていたのは一点。

ディズニー愛成分が足りない←

ということ。

作品のテーマを現代社会の実情に絡めて語られているという形をよく見かけたのですが、なんというか、分析内容が一般論的でディズニー愛が不足しているように感じていたので、これを機に筆者の考えをまとめておきたいと思います。

筆者がこの作品を通してお伝えしたいのは以下の二点

  • 「音楽」が作り上げるディズニー映画
  • 「ピクサー」ではなく「ディズニーアニメーションスタジオ」としての成功

まずは音楽とディズニー映画の結びつきについて見ていきましょう。

音楽が作り上げるディズニー映画

ディズニー映画の構成は音楽ありき。これは、ディズニーの創業者であるウォルト・ディズニー自身が手掛けた作品からも分かる通りです。ミッキーマウスが登場するトーキー映画「蒸気船ウィリー」では、楽曲による場面転換や楽器の音を効果音として使用するなど、アニメーション映画の構成として音楽が重要な役目を担いました。

一方、世界初の三色法カラー映画「花と木」を含む短編映画シリーズ『シリー・シンフォニー』では、クラシック音楽が物語の進行を主導する「映像美と音楽の融合」が行われました。この試みがやがてあの有名な「ファンタジア」の構想へと繋がっていったのです。(ちなみに「ファンタジア」の公開日は11月13日。当記事執筆時点で昨日)

ディズニーミュージックの名曲

ディズニー作品は映像に関する評価はもとより、主題歌として制作された楽曲への評価も総じて高いのです。初めてアカデミー賞歌曲賞を獲得した映画「ピノキオ」の「星に願いを」をはじめ、白雪姫、シンデレラ、ピーターパン、メリーポピンズなど、今なお愛される名曲とともに作品が生まれて来ました。

そして、ディズニーミュージックを語るうえで決して忘れてはいけないのが、今なお現役のレジェンド的作曲家

アラン・メンケンその人。

リトルマーメイド、美女と野獣、アラジンなど、時代を越えて愛されるディズニー映画の代表作の数々に作曲家として参加し、作品そのものの評価とともに、楽曲に関する賞を多数受賞してきたまさに生ける伝説なのです。(余談ですが、東京ディズニーシーにのみ存在するアトラクション「シンドバッド・ストーリーブック・ヴォヤッジ」では、アラン・メンケンが作曲した名曲「コンパス・オブ・ユア・ハート」がBGMとして使用されています。このアトラクションとBGMが楽しめるのは日本だけ!)

こうして、ウォルト・ディズニー~アラン・メンケンと脈々と受け継がれてきた「ディズニーミュージック」のDNAをアナ雪も見事に引き継ぎ、大きな評価を受けるほど昇華させたというわけなのです。

アナと雪の女王は、映画のストーリー製作の段階で大きな困難にぶつかったといいます。初期の構想段階の「雪の女王エルサ」は、もととなった童話「雪の女王」の物語に基づき、より邪悪な存在として描かれており、プロットの段階では制作者サイドの誰からも共感を得られないでいたようです。

そうした初期の構想、作品の完成を困難にする行き詰まりを打破したのが、

主題歌「Let it go」なのです。

楽曲の力で制作に携わる人間に気づきをもたらし、まさに「ありのまま」の自分を受け入れ、自らの世界に閉じこもる等身大の人間エルサを描くきっかけとなったのが、「Let it go」という楽曲がもたらした功績でした。これにより、単に邪悪な氷の女王ではなく、多くの人が共感出来るキャラクター「悩める孤独な女性」として生まれ変わりました。それほどのパワーが「Let it go」という楽曲には宿っていたというわけです。

ストーリーに影響を与えるほどの楽曲ということもあってか、制作サイドの思い入れは計り知れず、各国で公開された際に主題歌を歌いあげたそれぞれの言語、総勢25ヶ国語のボーカル音声をミックスして公開されたPVも大きな話題を呼びました。(サビ一発目に採用された松たか子さんの「ありのままの姿見せるのよ」の歌声は、国内のみならず海外でも軒並み高評価だったとのこと。)

(余談ですが、オリジナル「Frozen(原題)」の英語版主題歌をパワフルに歌いあげるイディナ・メンゼルは、実写とアニメーションを融合したディズニー映画「魔法にかけられて」で、主人公にやきもちを焼き、恋に破れるキャリアウーマン役として出演したことがあります。)

このマルチランゲージの試みは、ディズニーファン感謝祭であるD23 EXPOが初めて日本で開催された際、「各国の言語で作品が公開されても、声質と口の動きが限りなく同じになるように取り組んでいる」として紹介されていました。(その紹介の際、例として使用されていた映像は「ライオンキング」のティモンとプンバでした。言語の切り替わりに気づかないほど、どこの国の吹き替えを聞いても見事なまでに同一性を保っていました。)

制作者たちが作品のストーリーやキャラクターに込めた思いはもちろん様々あるでしょう。しかし、ヒットの要因としてそれらを語ることはナンセンスであると筆者は考えています。根幹は極めてシンプル。子供から大人まで映画館で歌う様がその証拠ではないでしょうか。

何をおいてもまず第1にあるのは、ウォルトから引き継がれるディズニーミュージックのDNAであるということだと思うのです。

ディズニーアニメーションスタジオとしての成功

ところで、ディズニーにあまり詳しくない方々からすると、ディズニー・アニメーション・スタジオPixar / ピクサーの関係性についてよく分からないという人が多いようなので、ここではその違いも含めて見ていきたいと思います。

まずディズニーアニメーションスタジオとは、ウォルト・ディズニーがつくりあげたディズニー映画の制作チームの流れを汲んでいて、美女と野獣やアラジンといった初期のディズニー映画黄金期を作ったいわばディズニーピクチャーそのものとしてのグループです。

一方Pixer / ピクサーはというと、もとは全く別の会社として創業した会社です。その中心として登場する人物は、

CGクリエーターエド・キャットムル

天才アニメータージョン・ラセター

そしてもう1人の天才、アップルの創業者であるあのスティーブ・ジョブズその人です。

スティーブ・ジョブズがピクサーを作ったということは意外にも知らない人が多いようなのですが、創業したアップルを追い出され、紆余曲折を経て再びアップルに返り咲くまで、自らの思いを体現するため(見返すため)に作った会社がピクサーなのです。

このあたりの沿革については、是非「ピクサー流 想像する力」を読んでみてください。当時のピクサーCEOエド・キャットムルが語り手となり、ピクサー設立からディズニーとの統合に至るまでの経緯が詳しく綴られています。ディズニー好きの愛読書として、またビジネス書としてもバイブル的な存在としての一冊になるはずです。スティーブジョブズの意外な一面や、現ディズニーカンパニーCEOボブ・アイガーも登場する貴重な歴史書でもあります。


ともかくとして、ピクサーがディズニーと正式に統合するまでの長い間、ディズニー映画はなかなかヒット作に恵まれない低迷期に入っていました。

一方ピクサーはというと、コンピューター会社のアニメーション部門として技術による映像製作に従事し、やがてディズニーとの共同製作による世界初フルCGアニメーション映画「トイ・ストーリー」の大ヒットにつながる躍進を見せたのです。(ちなみに、配給に関して折り合いがつかなかったピクサーとディズニーの不調和状態から、前任CEOからその役職を引き継ぎ、買収合意まで漕ぎ着けた立役者が現ディズニーカンパニーCEOボブ・アイガーです。)

いわばディズニーの不振をピクサーの作品がカバーするという救世主になったわけです。

ピクサーとの統合を果たしてから、ディズニーカンパニーは、ディズニーアニメーションスタジオ・ディズニー映画の体制を立て直すキッカケを見いだしていくのです。

ピクサーからエド・キャットムル、ジョンラセターの両名がディズニー映画全般の実務を担う形で役職につきました。ピクサーで培った製作体制や制作哲学により、見事にディズニーアニメーションスタジオを立て直し、ディズニープリンセス作品としては最後の作品から実に11年振りの新作「プリンセスと魔法のキス」を発表。翌年には初の3Dディズニープリンセス作品となる「塔の上のラプンツェル」を発表するまでに至ったのです。

これらピクサーとの関わり・統合が、ひいては2014年の大ヒット作であるアナ雪の大ヒットにつながっていく訳なのです。

つまり、記事前半で述べたディズニー映画初期から続くDNAと、CGを活用した新しい時代のクリエイター集団Pixer / ピクサーとの共闘という、新旧二つの文化の融合から生まれたヒット作がアナ雪なのだと思うわけです。

(これまた余談ですが、ディズニー・アニメーション・スタジオ作品とピクサー作品のオープニングには違いがあり、ディズニー・アニメーション・スタジオ作品では「蒸気船ウィリー」のモノクロ版ミッキーマウスが、ピクサー作品では電気スタンドを模したマスコットキャラクター「ルクソーJr」がそれぞれ登場します。どちらのスタジオの作品なのか分からないという方でも、この違いを覚えておけば映画のオープニングでどちらのスタジオ作品か判断できますよ!)

まとめ

ここまで書いてきた近年に至るまでのディズニー映画の2つの背景が、アナ雪のヒットを生み出したと筆者は考えます。

正直に言うと、アナ雪のストーリーや場面転換、キャラクターの役割についてなど思うところが無いわけでは無いですし、実際それにまつわる質問を身近な人にされたこともあります。

これに対する筆者の答えは簡単で、

だってミュージックファーストだもの(多分)

です。

主題歌はもちろん、それ以外でも要所に登場する楽曲の数々(雪だるま作ろう、生まれて初めて、愛さえあれば等)も素晴らしい完成度です。楽曲を見せる&聞かせるために作られた映画であると考えると、すんなり受け入れられる人も多いのではないでしょうか。「アナと雪の女王」は、映像美=アートとミュージック、アクセント的に散りばめられたユーモアで出来ているのです。それはファンタジアから続くディズニー王道の要素でもあるのです。

もちろんディズニー映画でも深堀りされたテーマをもとに製作され、考えさせられる作品は多々あります。そういった作品がお好みであれば、トイ・ストーリー3と同時上映された短編映画「デイ&ナイト 」をオススメします。

こちらの作品、初めて劇場で見た時はあまりの衝撃にトイストーリー本編に集中できないほどでした。世間的にはあまり話題にならなかったのが残念です(アニー賞受賞作)。


11月22日には「アナと雪の女王2」も公開されます。既に松たか子さんが歌うMVが解禁になり、またもや大きな話題を呼ぶのではないかと期待が高まっております。日本でのアナ雪大ヒットの陰には、松たか子さんと神田沙也加さんお二方の歌唱力が間違いなく要因としてありましたからね。

複雑なストーリーで、頭をフルに使って見る映画ももちろん良いのですが、肩肘張らずに大人から子供まで歌いながら感じるままに楽しめる作品も良いものです。

そういえばもう一点、アナ雪の興味深い点としては、ディズニー映画には珍しく「悪役」の最後がそれほど悲惨では無いところですかね。実はディズニー映画の悪役たちは、勧善懲悪的に悲惨な最期を遂げているパターンが非常に多いのです。こういった点にも注目して見てみるのも面白いかと思います。

あれ?それはそうと、今回の地上波放送でのオラフの歌唱シーンはどうなってしまうのでしょう…?

こちらも注目しましょう。

ではでは。

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